「感想」さいはての彼女のあらすじ

最近、茹だるような暑さに、いろんな意味で手に汗握りながら本を読んでいる筆者です。最近の悩みは、本を読む時に集中しすぎて、エアコンを忘れることですね。8月にコレは結構きつい。

さて、そんな僕が今回紹介する一冊は「さいはての彼女」です。これは、角川文庫から出版されている短編集です。主人公は、25歳若手の女性起業家で、仕事一筋結婚とも恋愛とも縁がない生活を送っています。そんな彼女が、とあることを切っ掛けに、会社から離れて旅に出ることに。その先でどんな人と出会い何を感じ、何を学ぶのか。

非常に興味深く、また面白い一冊でした。

さいはての彼女の感想とあらすじ

  • さいはての彼女のあらすじ
  • 本を読んでみての感想
  • 読んでみて、見どころはどこか?
  • 連続短編集という手軽さは魅力
  • さいはての彼女に続編はあるのか?
  • さいはての彼女に出てくるハーレーは?

さいはての彼女のあらすじ

今回紹介するさいはての彼女はのあらすじは、次のようなものです。これは、裏表紙より抜粋いたしました。

あらすじ

”25歳で起業した敏腕若手女性社長の鈴木涼香。猛烈に頑張ったおかげで会社は順調に成長したものの結婚とは縁遠く、絶大な信頼を寄せていた秘書の高見沢さえも会社を去るという。失意のまま出かけた一人旅のチケットは、行き先違いで沖縄で優雅なバカンスと決め込んだつもりがなぜか女満別!? だが予想外の出会いが、こわばった涼香の心をほぐしていく。人は何度でも立ち上がれる。再生をテーマにした言霊の短編集。”

女社長である、鈴木涼香という女性が、仕事から離れて旅をする話です。失意のまま旅に出て、立ち上がって帰ってくるという「旅」「再生」が一大テーマとなる小説です。

本を読んでみての感想

個人的な感想としては、「心の解放を忘れることなかれ」という所です。一生懸命に頑張る、がむしゃらに走り続けると、当然ですが視界が狭くなってしまいます。それは、うれしいようで悲しいことです。ふと、自分の旅路を振り返った時、その旅路に満足できるか、できないのか。そして、満足できなかった時には「心が折れる」のだと思う。その折れた所から始まる連続短編集だが、旅をしながら自分を顧みて考えている主人公を見ながら、気が付くと同じように振り返っている自分に気が付きました。繊細な心理描写、スピード感ある情景描写に、思わず自分も旅をしているかのような疾走感を感じます。自分との対話を行いながら、彼女の旅路に一喜一憂していく自分がいました。心の成長、心の再生、生きる強さ。考えること、学ぶことは多いが、それを覆い隠すほどの面白さがあります。読了後もスッキリと終ることができるため、手元に置いておきたい一冊でした。

読んでみて、見どころはどこか?

この小説の見どころは登場する様々な人物です。ただ、登場人物本人ではなく、一番見てほしいのはその背景です。連続短編集という形で「人生の再生と新たな始まりを求める女性たちの物語」を描いています。その背景にはどのような物語があるのか。そして、どうやって立ち直り明日を見ようとしているのか。そこを感じ取り、読み取る、そして同じ方向を見てみることが、この物語の見所です。生きることに対して、どこまで「強く立ち向かっていく」その姿は、僕たちに多くの経験と考える機会を与えてくれます。

連続短編集という手軽さは魅力

この小説は、連続短編集という形式です。だから、一章一章が非常に短く、手に取って読みやすいことが特徴で、魅力です。仕事の合間に、家事の合間に、ちょっとした休憩時間に読破できます。中途半端になりづらく、手軽に読むことができます。本のサイズも、文庫本もあるし、電子版もあるため、購入や読了難易度も比較的低いです。

さいはての彼女に続編はあるのか?

今のところ、「さいはての彼女」に続編があるという話は聞いていないですね。前作としては「生きるぼくら」があり、後作には「ハグとナガラ」があります。ただ、そのどちらも公式的に前編や後編という区切りがつけられているわけではありません。

ただし、公式の会見で「第一話にあたる「旅をあきらめた友と、その母への手紙」を『さいはての彼女』に収録した」という発言があります。この物語はもしかしたら、続編があるのかもしれないですね。比喩的な表現なのか、本当に第一話として描かれているのか。ともすれば、続編が出る可能性は多いに高く、期待してしまいます。

さいはての彼女に出てくるハーレー少女は?

本作でハーレーが出てくるのは、序盤です。北海道・女満別に降り立って、一人の女の子と出会います。ハーレーダビッドソンにまたがり、ツーリングをしている、明るく元気な女の子です。いきなりの登場人物が迫力満載ですが、彼女の言葉や行動に涼香は多くを学び、救われることになります。

彼女はナギという名前で、山梨県に住むハーレーのカスタムビルダーです。彼女の乗っているハーレーの名前が「サイハテ」です。まるで本格的な旅番組のように、丁寧に描かれる情景描写に自分もバイクに乗っているかのような錯覚、北海道の景色を想像しながら堪能します。彼女の誘いで一緒にツーリングをした涼香は、「スズカさんの夢は?」という言葉を問われて、回答に苦しみます。その先で得られた回答こそ、彼女が本当にこの旅をする必要があった理由なのかもしれないですね。

さいはての彼女は面白いのか?

  • 改めて考えてみると……
  • 作者は原田マハ先生
  • 映画化しているのか?
  • 旅と再生、それは人間に必要か?

改めて考えてみると……

この小説、改めて考えて感想を述べてみると面白いです。そもそも、物語の序盤は沖縄に行くはずで、なぜか北海道へ。そしてレンタカーから、ハーレーに乗り換える。なんとも行き当たりバッタリ、しかも慣れない旅で茫然自失に。かなりハードモードで、スタートから心の許容量には隙間がなく、本当に見ていて痛々しくつらい。でも、そこから這い上がってくる姿には「生きる強さ」を見ることができて、ちょっとだけ勇気をもらえます。

「新しくやり直す」というのは、言葉にすると簡単だ。知らない誰かに言うことも簡単だし、同情心で適当に言うことも簡単です。でも、本当にソレを実行するのは相当に難しいのだと、この本を見てよく理解できます。当然ですよね、それまでの価値観や考えを一度一新する必要があり、それは容易にはできないのですから。それこそ、頭と心を破壊しつくされるような何かが必要なのかもしれない。

作者は原田マハ先生

この本の原作は「原田マハ」先生です。小説家、エッセイスト以外にも、様々な顔を持つ先生で、たくさんの本を出版するだけではなくキュレーターとしても活躍しています。(資料蓄積型文化施設で、施設にある資料の鑑定や研究を行い、学術的専門知識をもって業務の管理監督を行う仕事です。)

食のセレクトショップ「YOLOs(よろず)」を京都市中京区にオープンし、その活動を広めるためにnoteでエッセイ投稿も行っています。本当に幅広く、様々な業界で活躍されている先生です。

映画化しているのか?

今回紹介した「さいはての彼女」は映画化していません。映画化していてもおかしくないくらい、描写も書き込まれて人気の作品ですが、映像化には手が届いていない作品です。映画化してみると面白いと思うのですが、この小説は小説で楽しむのも乙なものというのが正直な感想です。どこまでも、涼香とナギ、登場する北海道の人々が空想であるからこそ、幻想を壊さずに済むのかもしれない。それは、人の温かさや再生の踏み出し方、自然の雄大さ、広大さなど。自分の感じ方やくみ取り方を大切にしたい時には、映像化、映画化との解釈の違いがモヤモヤになりますからね。

「さいはての彼女」は、2010年代中頃の作品であり、もう10年前になります。今から映画化するのは難しいですね。

旅と再生、それは人間に必要か?

読んでいるときから、「人生は旅である」という言葉が脳裏を駆け巡り続けています。人生に旅って必要なのか、それとも「旅こそが人生」なのか。問題定義の仕方で回答が変わると思うが、結論からすると「旅も再生も必要だ」と僕は思う。それは、「人生の厚み」で大きな差となって現れる。はじめは知的好奇心でも、本当に壁にぶつかり人生を投げ出したい時でも、タイミングはいいと思う。そこで得られた体験や学びは、自分の人生に厚みを加える。単純な話で、「みた」「きいた」よりも「体験した」は圧倒的な強さがあり、自分の中に残るからだ。その経験は、少なからず思考や感情に影響を与えるだろう。思考をリセットし、感情を捨て、心を入れ替える必要が出たら、旅で再生してみてもよいだろう。

ただ、誰もの人生に「旅と再生」が必要かといわれると、多くの人には必要ないというのも事実だ。それは、大きな壁や難題、精神的闇がなければ、必要ないからだ。再生する必要がなければ、心の休息も新しい発見も興味が出ないだろう。なんなら、知的好奇心が豊富で行動できる人も少ないと思う。なので、基本的には多くの人に不要なもので、必要に駆られたら「旅と再生」をテーマに行動してみたらいいのではないだろうか。

「感想」さいはての彼女のあらすじの総括

感想と総括ですが、「さいはての彼女」はとある女社長が一人旅をするお話です。行き当たりばったりの先で出会ったのは、ハーレーに乗り自分の夢に向かって突き進む少女。その少女との出会いが、主人公である涼香に自らを振り返り、考える機会を与えます。彼女たち二人の旅が、涼香にとっては必要な心のリフレッシュ装置であり、成長の機会でもありました。人生、いつどこで何が起こるのか不明だが、何かあれば旅に出てみたいと、素直に思った。

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Posted by とあるオタク