ひどい話?陽だまりの彼女の見どころ

ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか。読了後も、妙な違和感となんとも呼べない不安感が支配する一冊。そんな一冊を前に、僕らはつい混乱してしまう。思わず、「これはひどい話だ」なんて、意見が自分の口から飛び出しそうになる。

だが、本当にひどい話でバッドエンドなのだろうか?いや、そうは思わない。今回は「陽だまりの彼女」を取り上げて、映画の内容などを踏まえて今一度読み解いていこうと思う。

本当にひどい話?陽だまりの彼女の見どころ

  • 陽だまりの彼女のあらすじ
  • 陽だまりの彼女の見どころはどこだ
  • 注目するべきは人間関係?
  • 主人公は普通の人間だった
  • ヒロインは驚愕の生き物って本当?
  • 原作小説を読んだ感想は?
  • 何故バッドエンドと評価されてしまうのか

陽だまりの彼女のあらすじ

交通広告代理店の営業マンである奥田浩介は、新規のクライアントであるランジェリーメーカー「ララ・オロール」との初の打ち合わせの場で、まさかの人物と再会する。中学時代の同級生、渡来真緒である。中学1年生の2学期に浩介のクラスに転校してきた真緒は、バカなうえに団体行動ができず、クラスでいじめにあっていた。しかし、そんな真緒には誰にも知られていない秘密があった。

浩介は真緒に惹かれ、2人は交際を始める。真緒の秘密を知った浩介は、彼女を守ろうと決意する。しかし、真緒の秘密は、実際に語られることはなく、気が付いた時にはすべてが手遅れで……。

陽だまりの彼女の見どころはどこだ

見どころは、ほっこりとした日常パートと、急に訪れる秘密の切り返しだ。二人が再開し、関係を深めていく描写も丁寧でそれだけで見どころになる。でも、それはこの小説を面白いものにする要素の一つでしかない。そこで終わると、ただの主人公が献身的で過去に少し闇を持っている男で終わってしまう。それだけではなく、「常識が通用しない女の子」という姿を脱ぎ捨て、本当に姿を消してしまうヒロイン。そこからの、主人公の描写、心理的な葛藤、そして最後の数ページの意味。そこが、この小説最大の見どころだといっても過言ではないと思う。「ほっこりした日常に、ちょっとだけ感動ファンタジー」というのは、最高に面白い見どころだ。

注目するべきは人間関係?

人間関係人も、ぜひとも注目してほしい。主人公である浩介サイドに関して、人間関係はそこまで深堀されていない。一方で、ヒロインである真緒に関しては、会社や家族関係、そして大学時代に遡って友人が登場する。何度も登場する、彼女の社内評価と、浩介が真緒に抱いている評価や感想のすれ違いなど、態度や発言で分かりやすく差別化され書かれている。真緒という一人の優秀な社員、ちょっとだけ特徴的な女の子を中心とした人間関係の様子は、物語をより面白くしてくれるだろう。一つの見どころになりえる要素だ。

主人公は普通の人間だった

ヒロインである真緒には様々な秘密があるが、主人公はただの男だ。普通のしがないサラリーマンで、中学校時代は勉強が得意な男の子。自分の中の正義に従って行動ができる人物で、でも少しだけ感情的な面が光る。大人になってからも、その優しい性格は持ったまま、生活を送っていた。彼の優しさと、優秀な人の中で埋もれてしまう平凡さは、ある意味で魅力的だ。現実的で、よくある話で、とても共感できる物語だからだ。ただ、彼の中には、「本当に人を大事にできる」という所があり、それは物語の細部でみられる。

ヒロインは驚愕の生き物って本当?

ヒロインである真緒は、実は猫でした。実家と呼ばれる家にも、実は拾われた子供であり、中学3年になって初めて、養子として迎え入れられています。中学校時代は、まだ人間になったばかりで「チビでいじめられっこで注意力散漫、すばしっこさだけが取り柄」という特徴があります。それは、ある種健忘症ではないかと思うほどに、記憶力が悪いです。ただ、高校では必死に勉強をして、もう一度浩介に出会うために、名門女子大学に進学するなど、成長とともに容姿端麗成績優秀な女の子に成長していきます。

浩介のことを最後まで追いかけ続けており、浩介との出会いは偶然ではなく必然だった。

原作小説を読んだ感想は?

原作小説を読んだ個人的な感想は、「ほっこりとの落差が激しい」ということ。感動したというよりも、このラストには安心感すら感じた。物語中盤まで、二人の仲睦まじい姿が丁寧に念入りに描かれている。ただ、その日常には少しずつ崩れていき、真緒の小さな異変から、物語はゆっくりと確実に進行方向を変え始めた。そこから、それまでの優しくほっこりする小説は豹変し、弱っていく真緒とそれを懸命に支える浩介の姿には、感動すら覚える。献身的な姿には、感動的でそのまま終わっても十分すごい小説だった。

何故バッドエンドと評価されてしまうのか

猫として、真緒と再会して終わるエンディングは賛否両論あります。当然ですが、「人間同士の恋愛」としてみていると、確実にバッドエンドだろう。だって、人間と猫に変わったのだから。でも、この小説のほっこり部分をしっかりと見てみると、人間同士の恋愛であることに関係はない時がつく。だって、最後のシーンで浩介は幸せそうだったから。きっとこの二人は、「一緒にいること」が一番大事なんだ。そう考えると、ハッピーエンドにも見えるでしょう。

公式的にはハッピーエンドと言っているので、敢えて決めるならハッピーエンドですね。

映画陽だまりの彼女はひどかった?その見どころは?

  • 映画版の見どころ
  • 原作小説と映画の違い
  • 浩介役には松本潤!ヒロイン役は上野樹里が担当
  • 映画版と小説版どちらが好みか?
  • 物語はハッピーエンドでよかったの?

映画版の見どころ

映画の見どころは、「主人公とヒロインの演技」「映像と音楽」があげられます。松本潤は、不器用ながらも真緒を献身的に支える浩介を好演しています。上野樹里は、記憶喪失という秘密を抱えながらも明るく前向きに生きる真緒を瑞々しく演じています。二人の演技は、作品に深みを与え、観る者を魅了します。映画は、江ノ島や鎌倉などの美しい風景を背景に描かれており、観る者に爽やかさや温かさを感じさせてくれます。また、主題歌である山下達郎の「光と君へのレクイエム」をはじめ、劇中に流れる音楽も作品の世界観に合わせて選曲され、文字ではなく物語の空気で見事に原作を表現しつくしています。

原作小説と映画の違い

まずもって、原作は千葉だが映画版では江の島をバックに撮影している箇所が多くあります。これから、物語の場所が変わっているとわかります。また、小説は物語を通して主人公である浩介の一人称視点で語り続けられます。でも、映画では真緒視点の物語が増えており、二人の仲睦まじい姿だけではなく、「真緒はどんな気持ちで最期を迎えたのか」を描いています。さらに、主人公の浩介が使う言葉も、節々で調整してあり、映画では恋愛チックな描写が減る分、会話の雰囲気などを重要視して調整されていました。

また、映画と小説はエンディングがまるで違います。ある意味で挑戦的なラストシーンは、バッドエンドを強調させていますが、それでも多くの人の目を引き心を奪い去っていきました。

浩介役には松本潤!ヒロイン役は上野樹里が担当

演技が映えた作品でしたが、主演は松本潤さんでした。原作でも、献身的な姿を見せていた浩介をさらに優しく、そして暖かみのある人物として演じています。

ヒロインは「上野樹里」さんが担当されました。女優として活動しており、天才や鬼才の多い業界でも、天才と評価されるほどの才覚を持っています。演技に対する熱意が高く、自分の世界観や表現方法には自信を持っており、それが原因で監督や演出家と議論を重ねることもあるようです。圧倒的な演技で、多くの人を魅了する上野さんにより、真緒は元気いっぱいな魅力的な女の子として見事に表現されていました。

映画版と小説版どちらが好みか?

個人的な見解は「小説版」のほうが好きです。とはいえ、映画と小説では表現方法が全く違うため、見せたい世界や、表現したい感情が違います。そして、エンディングを含めて制限が多い映画では、少々強引なエンドを作ってしまうなど、原作ファンからすると映画版では無理があるという評価もできます。

この二つに関しては正直好みが、はっきりと分かれます。物語の細部にわたる美しさを丁寧にみるのなら、小説。視覚的な要素をメインに、わかり良くきれいにまとまった物語を見るなら、映画が良いと思う。

物語はハッピーエンドでよかったの?

原作的にも映画的にも、ハッピーエンドであると言っています。なので、個人的にはハッピーエンドですが、前述したとおり個人の意見で分かれてよいでしょう。映画の少々無理のあるエンドに関しても、「ハッピーエンド」であるとみることもできます。小説版では、真緒のいなくなってからの浩介が丁寧に残酷に描かれているため、バッドエンド感が高まっていますね。

ひどい話?陽だまりの彼女の見どころの総括!

ひどい話と評価されることもある、陽だまりの彼女。ですが、個人的にはひどい話には思えないというのが正直な感想です。ただ、物語はしっかりと恋愛描写を描いており、半ばバカップルのような描写もあります。映画も小説も、全編通して見どころが多く、ハッピーエンドともバッドエンドともとれる最高の小説ですね。

それでは皆さん、良きオタクライフ。良き読書生活をお送りください~。

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Posted by とあるオタク